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留夏視点。



































うちの入浴の順番は決まっている。
たまたまではあるが、身長の低い順だ。
つまり私が1番。
別に一番風呂がいいというわけではないが、なんとなくそうなった。



そして事の起こりは、私がそろそろお風呂に入ろうかと思っていたときだった。






「一緒にお風呂入ろ?」


静姫が父に言った。
"父"というと少し語弊があるので、ここではあえて"なつき"と呼ばせてもらおう。


「私はかまわないぞ。」

「やった♪」


はにかんだ静姫は私から見ても可愛かった。


しかしこれで終わらないのがうちだ。
なつきは最早なつきのものではない。



「静姫、今日は留夏が一緒に入ることになってるんよ。」

「「えっ…?!」」



なつきの所有権は十の昔になつきの手元を離れ
家庭という戦場で獲得競争が続いている。



「ちょっとまっ

「そうやったよな?」
        (”違う”なぁんて言わへんよね?)

(ひっ……言いません!言いませんからお母さん!!)
                    
「う、うん!そうそう、そうだった!」



巻き込まれてはたまらないと思い、すぐに否定しようとしたが
母の、涼しげな笑顔の背後に放つ"この世のものとは思えないおぞましい何か"に負け
慌てて首を立てに振った。


「る、留夏…?」


それに慌てたのは静姫。


「い、行こう!」


なつきに一度笑いかけて(かなり引きつっていたことだろう)
静姫を見ると、捨てられた子犬のような瞳で私を見つめてくる。

あぁなんで本気にしちゃうかなー…


「ごめんね…。」


お母さんのあの笑顔が崩れないこの状況で
拾ってあげることは私にはできないっ…!



「留夏」


リビングを出て行こうとしたとき、母に呼び止められる。
嫌な予感はしたが振り返ると



「ゆっくりしてきてええよ。」
         (静姫にはちょぉ離れてもらわんとなぁ。)


と、いまだ涼しげな笑顔。


「留夏」


と今度は静姫に呼ばれて振り向くと


「私、今日は早く入りたいから早くあがってくれへん?お父さんはゆぅっっくりでええから。」
                               (分かってるやろうな?)


拾ってもらえなかった復讐か、母に似た涼しげな笑顔を向けられた。


「えっ…とそれは~…」


まずい。これはとてもマズい。








「めったとない機会なんやから、ゆっくりさせてあげてもええやないの。」
                      (あんたはこの前も妻のうちを差し置いて入ったやろ?)

「話したいならお風呂じゃなくてもえぇと思いますけど?」
                     (留夏を使うなんて姑息な手を…っ)

「裸の付き合いも大事や思うえ。」
             (相変わらずしつこい子ぉやね…っ)

「あぁ、やからよく夜中に、年甲斐もなく"えぇ声"出してはるんどすか?」
                                  (ふっ…ちょっとしずぎと違います?)

「「なっ…!」」
     

「聞かされるこっちの身にもなってほしいわぁ。」
                     (まだ続けます?)

「る、留夏っ!はよ行きっ」
           (聞いたらあかん!)

「おい留夏、はやく行くぞ!///」
            (静姫に聞かれてたのかっ…)           

「はいっ」
   (静姫はなんてこと口走ってんのよ!///)










結局私があがって戻ってきたときにはもう終わっていたが
ずいぶんやりあったらしく、静姫も母も疲労感を漂わせていた。

そして私はなぜか、母に言われてなつきと入ることになったにも関わらず
自室に戻るまで、母のあの涼しげな笑顔と"黒い何か"を浴び続けていた。









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