おうじさま

なつ静　幼稚園パロ


ほのぼのっていいよね。

 

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『おとぎばなし』



そんなものに憧れる時代が自分にもあった。

でも現実にもちゃんといるのだ。







王子様は

















◇　～風華幼稚園のある風景～　◇











＜月曜日＞



きょうもなつきは　うちよりちょっとおそくきました。


「おはよう、なつき。」

「おはよ…。」


なつきはいつも　あさは　おこったかおをしています。
おはなししてても　ん。　やら　ああ。　やら　あまりしゃべってくれへんの。
でも　おひるになると　ちゃんとおはなししてくれるし　いっしょにあそんでくれます。


”なあ、なつき…”


なつきのふくのすそをひっぱって　ちいさなこえでそういいます。
これがうちの　あそぼう　というあいずです。

そしたらいつもなつきは　うちとてをつないで　なにがしたい？　ときいてくれます。
すごくうれしいです。



やっぱりうちはなつきがだいすきです。












＜火曜日＞



きょうはなんだか　なつきはずっとおこったかおをしています。
でもちゃんとおはなししてくれるし　あそんでくれています。
うちのせいではないみたいです。
なつきは　うちのことがきらいになったんでしょうか。


うちはすきです。












＜水曜日＞



あさはいつもどおり　おこったかおをしてたけど
おひるには　ちゃんとわらってくれました。
おもいっきり　だきつきました。

それから　おそとはあめなので　いっしょに　えをかきました。
なつきはちょっぴり　えをかくのはへたです。
でもいっしょうけんめいかいているので　ひみつです。
それに　どうだ！　と　じしんまんまんにみせてくるなつきも　すきです。


ほんまは　もっといっしょに　あそびたかった。
おうちであそべればええのに…。









＜木曜日＞



きょうは　てんきがよかったので　おそとであそびました。
なつきは　すぽーつ　がとくいです。
おとこのこより　ずっとずーっとかっこいいです。

”いいか？しずる。ちゃんとみてろよ。”

と　うちになんどもおしえてくれます。
おかげで　うちもちゃんとできます。
なつきみたいにじょうずやないけど　なつきがほめてくれるので　このままでもええおもいます。



きょうもようちえんでおわかれでした。
なつきと　てをつないでかえってみたいです。













＜金曜日＞



きょうも　おそとであそびました。
とってもたのしくあそんでいたのに　いつもなつきのわるぐちばかりゆう　おとこのこたちがきました。
うちはこいつらがきらいどす。




きらいどす。






「おまえがいっしょにいたら　おれたちがしずるちゃんとあそべないだろ！」


なつきがおやすみでも　あんたらとはあそびません。


「なんだいっしょにあそびたかったのか。じゃあ　あそぼう。」


こんなクズたちにも　なつきはやさしいです。


「おまえとなんかあそばねーよっ！しずるちゃん！こんなやつとあそんでないで　おれたちとあそぼうぜ！」

「いたっ…ぃ！」


なつきに　あっかんべー　をすると
いきなりうちをひっぱってきました。
すごくいたい。
なきそうどす…！


「おいはなせっ！いたがってるだろう！！」


なつきがたすけようとしてくれています。
でもはなしてくれません。


「おんなのくせにじゃまなんだよ！」


こんどはなつきをなぐろうとしています。


「っ！あかんっ！」


なつきがなぐられるとおもいました。


でもなつきは　なぐられませんでした。


「おんなだからって…なめるなっ、よっ！」


なつきはそいつを　なげとばしてしまいました。


「うわぁっ！？」


そいつは　とてもかっこわるく　まけました。
ざまーみろです。


「ふんっ。しずるとあそびたいなら　しずるにやさしくしろ。しずるはよわいんだ。」


なつきのかおは　おこったかおではありません。
でもうちには　わかります。


「あと…」


なつきはいますごく。
ほんとにすごく　おこっています。


「しずるはわたしのだ。かってにさわるな。」


そういうと　まけいぬたちは　なきながらにげていきました。


「だいじょうぶか？ごめんな。いたかっただろう？」

「なつき…。」


うちのうでを　よしよしと　なでてくれます。


「でも、しずるはわたしがちゃんとまもるからな。あんしんしろ。」


こんなとき　なつきはとってもやさしいです。


「うぅなつきぃ…こわかっ…たぁ…。」


あんしんしたので　ないてしまいました。


「ほら、なくな。」


やさしくあたまをなでてくれます。
やっぱり　なつきがだいすきです。




すき　すき　すき。
こんなにかっこいいひと　ほかにおらへんもん。

すき。
なつきすき。





ちゅっ



「っ…！」


うちのすきが　なつきにつたわりますように。


「しずるっ、な、な、な…！」


なつきのかおは　りんごさんみたいにあかくなっています。


「だいすきのしるし…。あかんかった？」


なつきは　うちのことすきじゃないんでしょうか。
だったらすごく　かなしい。


「そ、そんなことはないっ！そんなことはないぞ！でもだいすきのしるしって…そりゃわたしもすきだけど！
　その…ああーーっもうしらんっ！！」


なつきは　はやくちでしゃべりだしたかとおもうと　とつぜんさけんで
それから　いきなりうちのかたをつかんできました。


「えっ…ん！」


えっ？

すごくちかくになつきのかおがあって…

このくちにあたっているのは…なん？



「も、もうなかへもどるぞっ！///」


かんがえているあいだに　なつきのかおははなれていて　ずんずんあるいていってしまっています。


「ま、まってなつき！」


もしかして　これは　その…

なつきもうちのことすき？
ほんまに？
なつきがうちに　ちゅー　してくれたん？



「なつき！」

「あぁもうなんだっ！」


なつきは　とまってくれません。
でもひだりてをちょっと　うしろにのばしてくれています。
ちょっとだけど。


「だいすきどすっ！」


ぎゅっとにぎったら　ぎゅーぅっと　にぎりかえしてくれました。










なつきはいつも　うちにやさしくしてくれます。
いっしょにあそんでくれます。
いろんなことを　おしえてくれます。
てをつないでくれます。
そして　ぴんちのときには　かっこよくたすけてくれます。
おうじさまみたいに　まもってくれます。
うちはずーっと






なつきがだいすきどす！



















◇　　　◇　　　◇　　　◇　　　◇　　　◇












「おい、静留。何見てるんだ？」


なつきがソファに近づいて、うちの手元を覗き込む。


「昔の日記どす。ひらがなばっかりで読むのに時間かかってしもた。」


ノートを閉じながらなつきを見たところ
どうやら内容を見る気はないらしい。




あの頃からずいぶん経った。
自分もなつきも成長した。



「日記なんか書いてたのか。いつのだ？」

「幼稚園どす。字も汚いし、なんや恥ずかしくなりますなぁ。」



と苦笑をうかべると



「私に比べたら綺麗だったじゃないか。」



となつきもどこか懐かしむような表情で言う。



「…って、ほら。そろそろ出かけないと遅くなるぞ。」



そういえば、探し物をしている途中にこれを見つけたんだった。


「そうやったね。これしまってきまっ…！」

「おっと…！」




立とうとしてバランスを崩したところを
倒れる前に、やっぱりなつきは支えてくれる。





「大丈夫か？ごめんな。痛かっただろう？」

　　　　『だいじょうぶか？ごめんな。いたかっただろう？』



そう言ってうちの体を起こしながら、掴んでいた腕をさする。

　　　　　　　　　　　　　　『うちのうでを　よしよしと　なでてくれます。』





「なつき…。」

「ん？」











もう何年も経った。
背もこんなに高くなった。
声も低くなったし、漢字だって書ける。








「静留？」









いろんな人に出会った。
素敵な人はたくさんいた。
だけどやっぱり










「好き…。」







ちゅっ










なつきが大好き。
なつきよりかっこいい人なんていない。
なつきより愛しいと思える人なんて、いない。








なつきだけが












「ば、ばかっ…行くぞ！///」





















うちの王子様。