×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
こんなに遅くなるとは…申し訳ない。
実はこの話自体はだいぶ前にできてたのですが、アップしようしようと思い続けて
結局この日に。
遅くなったわりに大した内容はないですが
気にしてくださっていた方がいらしたら読んですっきりしてください。
目を開ければそこは見慣れないベッドで、上を向けばいつもとは違う天井。
どうして、と少し逡巡すれば
あぁ引っ越したのだ
と、まだ働かない頭で答えを見つけ出す。
そして少し横に視線を移せばそこには唯一見慣れたもの。
「おはよう、静留。」
朝だというのに爽やかな笑顔に
上手く動かない筋肉をなんとか動かして、ぎこちない笑みを浮かべながら
「おはよ…に、さ…」
と挨拶を返す。
そうすれば兄さんは満足したように笑みを深くして
私の頭を一度撫でて部屋を出ていく。
それを追うように部屋を出ればそこにはちゃんと兄さんがいた。
そんな当たり前なことでも、自然と口元が弛んでしまう。
「顔を洗っておいで。味噌汁、温めておくから。」
朝ごはんのいい匂い。
それだけで
私はもう温かい。
こんな日々がずっと続けばいいのにと
思うくらいはいいだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学校に行けば気を張った毎日。
なるべく分かりやすい京都弁を使ってはいても、やはり意味を問われることもある。
それにまだ1ヶ月も経っていないのだから、クラスにもなんとも言えない緊張感が漂っている。
人間関係に困ったことはない。
藤乃に生まれ藤乃に育った自分には
生まれついての柔らかさだとか、気品だとか。
そういうものがあるのだと兄さんが言っていた。
確かに。
笑ってさえいれば事は上手く運ぶのだと、自分でもそう思っている。
恵まれているのだ。
何不自由ない生活。
温かい環境、父親、兄。
こうして上手くやれているのは兄さんの言うとおり
この家庭環境のおかげだろう。
だからきっとやっていける。
ここでもきっと、やっていける。
「藤乃さん。この問題を解いてみて。」
はやく学校が終わらないかと
席を立ち、黒板に向かいながら
そんなことを考えていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
”寮”といっても1人部屋。
基本的には自由だ。
「ただいま。」
たとえ
「おかえり。」
兄離れ出来ていなくたって構いやしない。
「なぁ明日どっか出かけぇへん?」
帰宅を確認して、お茶を淹れてくれようとしている横に立つと
身長差は歴然とする。
自分があと数年でどんなに伸びたとしても、頭ひとつ分は違うだろう。
思わずてっぺんを見上げた。
「何かついているか?」
そんなうちを見て、分かっているくせに訊くものだから
「いけず…」
と必然的に上目遣いになってしまう瞳で睨んだ。
「すまない、つい。」
自分がいくら睨んだって効果がないことくらい分かっているが
クスクス笑いながら謝られると
余計悔しい。
「兄さんが大きすぎるんどすっ!」
「あぁ怒らないでくれ、静留。それよりどこに行きたいんだ?」
未だ治まらぬ笑いを必死に堪えて(全然こらえられてへんし…!)
肩に手を置いて宥めながら尋ねてくる。
「今日クラスの子にいろんなお店教えてもろたんどす。やから一緒に行ってもらお思て…。」
「そうだったのか。」
やはり笑いは治まらないようだ。
「っ~~~もうっ!兄さんゆう人は!」
笑われるとつい拗ねてしまう。
まだまだ子どもだ。
「あぁもう…分かったよ静留。すまなかった。だから明日、一緒に行こうな?」
が、自覚してはいるものの
子ども扱いされるのは癪なので
「兄さん全部払ってな?」
と最後のキメ台詞。
もちろんこんなこと言わなくたって
兄さんが私にお金を出させるなんて、一生ないだろう。
こうやって大人ぶった台詞を言うのも
「あいかわらず静留は厳しいな…。」
と少し情けない顔で笑うのも
「母親ゆずりらしいさかいなぁ。血には抗えへんやろ?」
昔から少しも変わらないやり取り。
「はは、弱ったな…。」
そう
何ひとつ変わらないはずだった。
大好きだった。
PR
Comments
Post a Comment