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九妙




































親友だと。
彼女はそう言うから、離れることさえ許されない。
それがこの傷の与えた僕の罰。

ならば。

一生逃れられやしないのだろう。











「なあ妙ちゃん。」

「なに?九ちゃん。」

「僕はまだ親友かな?」


よく晴れた穏やかな午後。
たまに訪れる妙ちゃんの家にふたりきり。

あれ以来波風ひとつ立てなかった関係に
終わりを告げるのは僕の役目だろう。


「九、ちゃん…」


はっとしたお妙ちゃんの心臓は、びくりと跳ねたに違いない。


「せめて」

「私はっ…私は九ちゃんが好きよ…でもっ」

「妙ちゃん」


妙ちゃんは僕が
親友以上になっていないか、と訊きたいのだと思ったのだろう。
そんな妙ちゃんの早とちりは僕が止めてあげる。


「せめて…せめて友達にはなっていないかな?」

「えっ?」

「だから、親友以下にはなってないかな?」

「…!」



僕の言葉に固まった君は
何を思うのか。



「そんな…なるわけないじゃないっ…」


感情を抑えた震えた声で、でも必死に訴えかけてくる妙ちゃんは
少し色っぽいなと思った。


「そうか…ありがとう。」


なんて
ほんとは思っていないのだけど。



「そろそろ帰るよ。じゃあね妙ちゃん。」

「九ちゃん!」


混乱する頭を整理できずにいる君が
あっさりと帰って行く僕を呼びとめるのは
僕との別れが惜しいわけじゃない。



「どうして」

「僕は」



ただ交錯する頭を落ち着けたいだけ。
妙ちゃんの中では会話が終わっていないだけ。
そう、条件反射のようなもの。






    

       僕は君と他人になりたいよ。








聞いた妙ちゃんの反応を、僕は知らない。
1度だって振り返らなかった。
知ってしまったら、二度とその表情を忘れられない気がした。


知っているとしたら、僕を呼んだその声だけだろう。
これもきっと






忘れることはできないだろうが。











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