休日

初なつ静

か、可愛い静留がいたっていいじゃない!!



なつき→大学生
静留→社会人
 

 

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「なぁなつき、ちょお背ぇ伸びたんとちがう？」

 

  
 

よく晴れた休日。

めずらしく家事を手伝っていた。

 

 

「そうか？」

 

  

そう言って、隣で一緒に洗濯物を干す静留の顔を見る。

 

言われてみれば。

同じ姿勢でいるのに、数年前は少し上にあった綺麗な緋色が

今は目線の下にあった。

  
 

「な？」

 

  

微笑む彼女はやはり美しいと思った。

 
 

「そうみたいだな。きっと私は静留よりよく動くから。それに私のほうが若いしな。」
 

「そんなことあらへんよ。家事もけっこう体力使いますよって、うちかてぎょうさん動いてるえ。

 それに！なつきかてもう２０歳超えてるし…」
  

 

意地悪く返すと少し拗ねる静留に、なんだか穏やかな気分になる。

 

  
 

思えば

こうやって素直に感情を出してくれるようになるまで

ずいぶんと時間は掛かった。

お互いにたくさん傷ついた。

 


それでも

 

 

 
「それは失礼。じゃあ少しは静留の仕事を減らしてやらないといけないな。」

「そんな…うちは好きでやってるんやから、なつきは気ぃ使わんといて？せやないとうち…」

 

 

 

わざとらしく困ったという態度で言うと

焦って不安げに上目遣いで見上げてくる静留。

役に立たないと愛想をつかされてしまうとでも思ったのだろうか。

 





 

あぁ、いつからお前は

そんなに可愛らしい人になってしまったんだ？

前はあんなに余裕そうに構えていて、こんなことには意地悪く返してきたものを。

それともこれは反動だろうか。
 

本当はこんな風に年相応に可愛らしい人だったのに、強くあることを強いられた残酷な過去が
今ではありのままにその弱さを出させているのだろうか。

 

 
 

だとしたら

なんと一層愛しいことだろう。

 

 

 

 
「静留。」
 

 

優しく抱きしめると

香るのは静留の甘い匂い。

 


 

そうか。
きっと私のほうが背が高くなったのは




静留がこんなにも”女”だからだ。

決して笑顔を崩さない強さを持っていながら
本当はとても弱くて繊細で。

 

ついには壊れてしまったこともあった。

 

 



守ってあげないと。

支えてあげないと。

崩れてしまう存在だから。

そのために静留より大きくなったんだ。

 

 




 

 

　　　　　　　　　　なぁ静留。

　　　　　　　　　　　分かるか？


　　私がどんなにお前を愛しているか。









　　　　分かってないんだろうなぁ。

 

 

「いつまでもお前はこの腕の中に……」




抱きとめて離さない。




大丈夫。




私はこの腕を解くことなんてできやしないから。







 

「なつき…ずるい。いつの間にかそない大人になって。なんやうちのほうが子供みたいや…。」

 

 

クスクスと笑って腕に緩く力を籠めれば
最後の抵抗か

 

 

 

「うちのほうが年上やもん……。」

 

 

と照れた声で、顔を埋めたまま呟いた。
 

意地らしく少しだけ回された腕に、今度こそ声を出して笑った。

 

 

 

 

 

 

 

こんなに心穏やかに過ごせる日がくるなんて

こんなに静留が甘えてくる日がくるなんて




あの頃の私は思いもしなかった。

 

 






　　　　　　　　静留。

　　　近頃私は思うんだ。

 









「"玖我静留"…だな。」
 

「…！」

 
  

私たちは決して結婚できない。

でもこうして


共に毎日を過ごし。

優しく抱きしめ合って。

同じ痛みと喜びを共有して。

誰もが知る"藤乃静留"からは到底想像できない静留になって。





もう充分に"玖我静留"ではないか。




 

 

ちゃんとここまで来れたな、静留。

 

 

 

 

「携帯のアドレス帳変えないとな。」

 

「…あほぅ。」

 




 

 

 

 

 

 

ぎゅっと回された腕が"嬉しい"と教えてくれた。